星の巡礼 The Moment of Truth

【配信】

 ■2nd Album 1999年作品

○○○○○○○○イメージ
至高のドリーム・ミュージック 寿和セカンド・アルバム
寿和の魔法のようなサウンドが紡ぎ出す"不思議な空間”
願わくはこの"不思議”で”幸せな気分をひとりでも多くの人が共有されんことを

曲目
1.星のひとりごと
2.モンゴルへの路(Dream Mix)
3.風のささやき
4.秋桜
5.風の大地
6.自由への息吹き
7.コンドルは飛んでいく
8.A Saint Of Tibet
9.オータム・ウインド
10.遥かなる大地
11.星の彼方へ
12.ライジング・サン
レコーディング・クレジット
Producer - TAKA NANRI
Associate Producer - Moko Nanri
Ocarina - TOSHIKAZU
Computer Programmer - Norikazu Osawa
Recorded at Sound Design Studio (Tokyo)

オリジナル ライナー・ノーツより
 ヒーリング・ミュージック (癒しの音楽) が「流行」から「定着」へと変わり、人々が心の憂さを音楽によって晴らし、心鎮めるために音楽を聴くことを誰も不思議に思わなくなってきた。かつてのニュー・エイジ・ミュージックが、今完全にヒーリング・ミュージックにその座を譲ってしまったように、このヒーリング・ミュージックもまた他の音楽に取って代わられるときが来るのだろうか……。

 寿和の既発売アルバム「スピカ/星宿」(ニュージャケットで再発売された) とこの新作「星の巡礼」とを繰り返し聴きながら、ぼくはそんな未来のことをふと考えたりもしている。 実際、この"寿和サウンド"に身を投げ出していると、時間、場所、時代などを忘れさせる不思議な空間が現出してくるようだ。 ここにキャッチコピーにもある「ドリーム・ミュージック (癒しを超えた感動の音楽)」の神髄がある。現実を忘れ、空想の世界で思いきり羽を伸ば "サウンド"に、さあ、心行くまで没頭しよう。

 ところで、オカリナという楽器のことをあなたはどの程度ご存じだろうか。この楽器は土で作られた笛、土笛とか鳩笛と呼ばれるものと同じ。もっとも、オカリナ(もしくはオカリーナ)とは"小さなガチョウ”の意味で、 "ハト"のことではないというのだから、少々ややこしい……。これを考案したのは19世紀後半のイタリア人、ドナーティーといわれているが、 同じような土製の笛は、アジア、アフリカ、中南米にも存在していたようなので、必ずしも イタリアがルーツとは言い切れないような気もする。オカリナの音は澄んだ感じに聞こえ るが、よく聴くと、ややくぐもった音にも聞こえることがあると思うが、これは吹き込まれ た空気の出る孔が、指孔以外にない、いわゆる閉管であるという構造上の理由によるものだ。 ただし、寿和は発音孔の位置を工夫し、この空気の流れを従来のオカリナと変えるようにし ている (ちなみに、彼が群馬県太田市に無有窯を開き、オカリナ制作だけに没頭した時期が 7年間ほどある)。独特の"寿和サウンド”の秘密の一端はこんな所にもあるわけなので、その辺に留意して聴かれるのも一興だろう。

 寿和 (本名:松本寿和) は愛媛県生まれ。中学時代に見たテレビ映画の中に、一兵士が戦場でオカリナを吹くシーンがあり、その音色に魅せられてオカリナの道に入ったという。
 香山久氏に師事し、勤め始めた会社(NHK)を辞め、オカリナ制作と演奏に専念するようになってからもうかれこれ四半世紀が経過しようとしている。十分すぎるキャリアだが、ことソロ・アルバムに関してはこれが2作目という初々しさ。今後への期待が高まるのも当然である。

 さて、本アルバムである。
 まず、プロデューサーが、知る人ぞ知る南里高世氏であることにご注目を。南里氏は、かつてシンセサイザーの喜多郎やオカリナの宗次郎のプロデュースをし、彼らを世に送り出し た人。人を見る目の正確さと、ハイセンスな音作りには定評がある。特にこのようなインストゥルメンタルもののジャンルにおいての氏の感覚は他の追従を許さない。ついでに書けば、カナダのピアニスト、スティーヴ・レイマンを日本に紹介し、ヒーリング・ピアニストとしてスターにしたのも南里氏であった。

 そんな名プロデューサーのお眼鏡にかない、スタートを切った寿和が、満を持して、という感じで約3年ぶりに完成させたのがこのセカンド・アルバム。全12曲がそれぞれ曲のイメ ージに添ったタイトルを付けられて並んでいる。・・・が、しかし、この曲名にこだわって聴く必要は全くない。曲を聴いて抱くイメージは、それぞれ異なって当然だし、演奏者(ほとんどの曲の作者でもある) も曲名と曲調をリスナーに強要する気は全くないのだから。自由に、気楽に聴くことこそ最も大切なことと思われる。

 「いつの世にも、どんな場所でも、音楽は人の心を癒し、やすらぎを与えてくれる"母性”に似た不思議な力を持っている」
と言ったのは、寿和でも南里氏でも、筆者でもなく、歌手の米良美一氏なのだが、音楽を愛する者なら、誰もが心に抱いている気持ちをたまたま米良氏が代弁してくれたに過ぎないともいえそうだ。この言葉を思い出したのも、寿和の魔法のようなサウンドが紡ぎ出す"不思議な空間”に今、筆者が身を置いていることの何よりの証明といえるだろう。願わくはこの "不思議”で”幸せな気分をひとりでも多くの人が共有されんことを。

< 1999/04 宮本 啓 >

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